2009年 06月 09日
オリンピックの身代金 |
空中ブランコやサウスバウンドでおなじみの奥田英朗さんの最新作。
奥田さんといえば、笑の中にチクっと痛いところをついてくる、私の中ではどちらかというとポップな作品を書く作家さんというイメージがありましたが、この作品はこれまでと一味違って、骨太のサスペンスでした。
東京オリンピックが行われる昭和39年の7月からその当日までの物語です。
オリンピックを阻止するテロリストと警察の戦いを描いたものなのですが、犯人側、警察側、犯人に関わる人たちと視点と時間軸がコロコロ変わる、伊坂さん風の作風で、ついつい物語りに引き込まれました。
私が生まれる前の話ですが、それくらいの日本って今より格差のない社会だと、漠然と思っていたのですが、地域格差がものすごかったんですね。
都会ではどんどん近代化が進み、豊かな社会へと変貌を遂げてる一方、まだまだ地方では出稼ぎに出ないと生活も出来ない貧しい人たちがたくさんいたのです。
そんな社会に疑問を抱き、テロを画策する犯人。
でも、社会を変えたいのなら、もっと違う方法があったはずです。
いかなる理由があっても、暴力に訴えるのは間違ってると思う。
でも、国家を動かすというのもまた一筋縄でいく物ではないんだなぁ。 フィクションといえども、ちょっと背筋が寒くなるような感覚は、これまた伊坂さんのゴールデンスランバーやモダンタイムスを彷彿とさせるものがありました。
どこか現代にも通じるものを感じて、いろいろ考えさせられる作品でした。
by yamakun0521
| 2009-06-09 10:06
| 読書